
アメリカの経済指標の中でも、就業者数を調査した「雇用統計」と並んで重視されている経済指標が、インフレ率を調査した「消費者物価指数(consumer price index = CPI)」です。
今回はこの消費者物価指数について見てみましょう。
消費者物価指数とはなにか
米消費者物価指数とは、全米の人口の大半を占める都市部の一般消費者家庭が平均的に購入する「商品」と「サービス」を固定して、総合的に物価がどのように変化しているかを指数化した毎月発表される統計のことを言います。対象となる項目は、食品・住宅・アパレル・医療費・教育費など、非常に細かく分類されているものの、月ごとでは振れ幅の大きい食品・エネルギーを除いた「コア指数」の動きが特に重視されています。
1982年の物価水準を基準として、年金や医療、保険などの社会保障のインフレ調整に利用されている経済指標の1つであり、FRB(Federal Reserve Board = 連邦準備制度理事会)の金融政策に大きな影響を与えるため、メディアや市場関係者の大きな注目を集める経済指標の1つとして知られています。業種ごとに細分化されたデータが地区ごとに集計・発表されるため、投資家のファンダメンタル分析に有効な経済指標の1つでもあります。
消費者物価指数のデメリットとしては、毎月集計・発表されるためにどうしても月ベースでの変動幅が大きくなることと、調査方法である購入するサービスと商品を固定して物価の変動を見る「固定CPI」は実際の経済状況を歪めた内容になると言われている事があげられます。
消費者物価指数の発表時間はいつか
消費者物価指数は、毎月13日ごろの東部時間8時30分に前月分の統計が発表されます。
日本時間では前日の6時半となり、日本での取引が終了した時間に発表される雇用統計と比べると、比較的反応しやすい経済指標と言えるでしょう。
消費者物価指数はなにを表すか
雇用統計と並んで重要な経済指標の1つと言われている消費者物価指数は、アメリカのインフレ率を表す経済指標です。「インフレ」とは正しくは「インフレーション(inflation)」と言い、経済学においてモノやサービスの全体の価格を表す物価が、ある期間において持続的に上昇する経済現象のことを言います。
典型的なインフレは、景気が拡大しているときに発生します。経済やサービスに対する需要が増加することで、経済全体の需要と供給のバランス(均衡)が崩れて総需要が総供給を上回ったときに、物価の上昇によって需給が調整されることで発生します。物価の上昇は同時に貨幣価値の低下を意味するため、インフレが進むことで同じ金額でも購入できる物品は少なくなります。
インフレとは反対に、経済全体で見た需要が供給を下回ることが主な原因で発生する物価の持続的下落は「デフレーション(deflation)」と言い、景気が後退しているときに発生しやすい傾向があります。
物価の上昇をまとめてインフレと呼んでいる場合がありますが、正しくは景気が拡大しているときの物価の上昇をインフレと呼び、景気が後退しているときに起きる物価の上昇は、スタグフレーション(stagflation)と呼ばれています。20世紀初頭のヨーロッパや現在のアフリカの新興国で発生するような極度のインフレ(ハイパーインフレ)の進行は、通貨の信用を大きく損なうだけではなく、経済そのものにも悪影響を与えるために警戒されています。
しかし数%程度のインフレの進行であれば、経済状況の悪化ではなく景気の拡大を意味しているため、各国の中央銀行は物価の安定とインフレの抑制を秤にかけて金融政策を決定しています。
そのために欠かせない経済指標が、消費者物価指数なのです。
おわりに
消費者物価指数はインフレの状況を把握するためには欠かせない経済指標の1つであり、雇用統計と並んで重視されている経済指標です。是非とも注目するようにしてみましょう。
参考サイト
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