
経済指標は実に様々なものがありますが、最も基本的な経済指標として小学校でも習うのがGDP(Gross Domestic Product = 国内総生産)です。
今回ではGDPについてのおさらいと、世界で最も経済規模の大きい米国のGDPが世界経済に及ぼす影響を見てみましょう。
GDPとはなにか
そもそもGDPとはなんでしょうか。GDPに対する最も基本的な理解としては、一定の期間内に対象となる国の中で生み出された付加価値の総額のことを言います。
もう少し踏みこんで見てみると、国内総生産はお金の発行量や資産として計上される「ストック」に対して、お金の流れである「フロー」をあらわす経済指標であり、経済を総合的に把握する国民経済計算の中の1つの経済指標であり、GDPの伸び率が経済成長率にとして扱われています。
原則としてGDPには、市場で取引された財やサービスの生産のみが計上されるため、市場で取引されない活動はGDPには含まれません。このため同じ労働であっても、給与の発生する労働はGDPに含まれますが、給与の発生しない家事やボランティア活動などはGDPには計上されません。付加価値としてのお金のやりとりが発生しない労働を統計に含めないことは、GNP(Gross National Product = 国民総生産)でも変わらず、経済統計としての正確性に疑問符を投げかける経済学者も一定数存在しますが、これに替わる決定的な経済指標は未だに定まっていないため、現在でもGDPが最も基本的な経済統計として利用されています。
また、統計ととることが著しく困難か、もしくは不可能である違法な薬物売買や非合法な売春に代表される「地下経済」を含めないことが一般的でしたが、2014年以降はEU加盟国の一部の国ではこうした地下経済も統計の対象に含めるようになっています。GDPの統計方法は国連統計委員会が勧告を出して、統計設計や財の概念の設定など、正確性を保証するための様々な基準の設定は勧告に沿って行われます。
ちなみに日本ではGDPではなくGNPが経済規模を表す最も代表的な経済指標としてひんぱんに利用されていましたが、1993年からGDPが代表的な経済指標として取り扱われるようになり、2000年には算出方法の変更によりGNPという概念そのものが廃止されます。代わってGNI(Gross National Income = 国民総所得)が制定され、GNPとほぼ同様の経済指標として機能しています。
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2つがあり、名目GDPはものやサービスの付加価値を合計したもの、実質GDPは名目GDPから物価変動を除いたものとなります。
GDPはどのような影響をもたらすのか
GDPは経済指標としては最も基本的なものですが、金融取引にはどのような影響があるのでしょうか。実はGDPは最も基本的な経済指標であるため、他の経済指標のように発表されたからといって即座に取引市場に大きな影響を与えることはほとんどありません。他の経済指標であれば数秒から数分単位で大きな値動きがあることもザラですが、GDPの場合は数時間程度をかけて多少の変動があるかないかに留まります。
各国のGDP推移
それでは最後に、各国GDPの推移を見てみましょう。世界経済のかなりの部分を占めるアメリカは、安定して1位を独占していますが、2位以下がめまぐるしく入れ替わっていることと、中国が順調に順位を上げていることに注目してください。
出典:Wikipedia – 国内総生産
おわりに
ここまで見てきたように、GDPは最も基礎的で重要な経済指標であり、経済活動の大部分をまとめて比較・検討するためには欠かせない経済指標の1つですが、株式市場や為替市場をはじめとする金融取引市場に大きな影響を与えることはごくまれです。その代わり長期的な国ごとの経済動向を把握するのにうってつけであり、経済動向を分析するファンダメンタル分析には欠かせない経済指標の1つと言えそうです。