
この記事の概要
アメリカ経済の景気動向に関する「景気総合指数」と先行する「景気先行指数」
アメリカ経済の景気動向を読み解くための経済指標はいくつかありますが、それぞれの指標に関連性こそあるものの、業種別・内容別に発表されるため、網羅性に欠けるのが現状です。
そこでアメリカの民間調査機関であるコンファレンスボード(全米産業審議会)が業種を横断して収集・分析した各種経済指標を合成してアメリカ経済の景気動向を予測する経済指標である景気総合指数の中でも先行して動く経済指標から算出される経済指標を特に「景気先行指数」と呼びます。
「景気先行指数」とはどのような経済指標か
複数の経済指標を合成して1つの経済指標を算出するコンポジット・インデックス(composite index = CI)により景気動向の方向性を示唆する「景気総合指数」のうち、景気に先行して現れる経済指標のことを特に景気先行指数と呼びます。
景気先行指数以外の景気総合指数としては、
景気に先行して動く11個の経済指標による「先行指標:Leading indicators」
- 製造業の週平均労働時間(時間)
- 週平均失業保険申請件数(千件)
- 消費財新規受注(10億ドル)
- 入荷遅延比率(%)
- 設備財受注(10億ドル)
- 新規住宅着工許可件数(指数)
- 製造業受注残高(年率、10億ドル)
- 原材料価格(変化率、%)
- S&P500種株価(指数)
- 実質マネーサプライ(10億ドル)
- 消費者期待度指数(指数)
景気と呼応して動く3つの経済指標による「一致指数: Coincident Indicators」
- 非農業雇用者数(千人)
- 移転所得を除く個人所得(年率、10億ドル)
- 鉱工業生産指数製造業及び商業販売額(10億ドル)
景気に遅れて動く6つの経済指標による「遅行指標:Lagging Indicators」
- 平均失業期間(週)
- 製造業及び商業の対売上高在庫比率
- 製造業の単位当り労働コスト(年率換算、%)
- プライムレート(%)
- 商・工業貸付残高消費者信用対個人所得比率(%)
- サービス業の消費者物価指数(年率換算、%)
の3つの景気先行指数が存在しています。
先行指数は景気先行指標とも呼ばれ、一般的に景気の山に対して平均約9ヵ月、谷に対して平均約4ヵ月程度の先行性があるとされていますが、的中率はそれほど高いとは言えません。
先行指数から遅行指数までの全ての景気総合指数は、発表済みの各種経済指標の合成です。そのため予想が比較的簡単であり、予想外の結果にはなりにくいという特徴があります。景気総合指数は大雑把な方向性を把握するのに有用ですが、細かい分析に役に立つとは言いにくい経済指標と言えるでしょう。
景気総合指数と景気先行指数のメリット・デメリット
景気総合指数を分析に用いるメリットとしては、景気動向のピーク・ボトム付近のときに転換点を見極める基準となる指数であるため、比較的注目度が高くなる点が挙げられます。
デメリットとしては、景気先行指数を構成している各種の経済指標は既に発表済みの経済指標であるために予想外の結果にはなりにくいこと、注目度がそれほど高くないこと、何よりも政策決定に重要な影響を及ぼさない経済指標であることがあげられます。
景気先行指数が上昇傾向であれば景気回復・拡大が示唆されるため、安定資産である債券価格の下落と米ドルの上昇要因となりますが、逆に指数が下落すると景気減速が予想されるため、債券価格の上昇と米ドルの下落要因になると考えられます。
おわりに
いくつかの経済指標を合成することで算出される景気動向指数のうち、景気先行指数はアメリカ経済の動向を予測する手がかりとして有用な経済指標ですが、発表済の経済指標を合成して算出されるため、予想外の結果になることは少なく、重要な経済指標とは言えません。
他の経済指標の内容を補完する程度の扱いで問題ない経済指標と言えるでしょう。