
雇用統計と並ぶ重要な経済指標の1つと言われているものの、日本での知名度があまり高くない経済指標がISM(Institute for Supply Management = 供給管理協会)製造業景気指数です。
今回はこのISM製造業景気指数について詳しく見てみましょう。
ISM製造業景気指数とはなにか
ISM製造業景気指数とは、ISM(Institute for Supply Management = 供給管理協会)が発表する製造業における景気転換の先行指標のことを言います。
日本銀行が四半期ごとに行なっている「企業短期経済観測調査(日銀短観)」と類似した統計で、日銀短観がゼロを分岐点として+(プラス)と−(マイナス)で企業の景況感を表すのに対して、ISM製造業景況感指数は0から100までのパーセンテージで表し、50%を景気の拡大・後退の分岐点として、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示しているとしています。統計の手法も日銀短観と似たような方法を採用していて、製造業300社以上の購買・供給管理責任者を対象に、各企業の受注や生産、価格など10項目についてアンケート調査を実施することで行います。「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の三択の回答結果を集計し、季節調整を加えた新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の5つの指数を参考にして、ISM製造業景況感の総合指数が算出されます。毎月発表されるアメリカの主要な経済指標の中でも最も早い毎月第1営業日に発表され、「ISM非製造業景況感指数(毎月第3営業日発表)」とともに、米国の景気先行指標として注目されています。
ISM製造業景気指数はどのような影響をもたらすのか
ISM製造業景気指数は、アメリカの主要な経済指標の中でも最も早く発表される経済指標であるだけではなく、企業の景気の状態に対する印象(景況感)を最も敏感に反映するため、雇用統計などと並んでアメリカの主要な経済指標の中でも特に注目される経済指標の1つです。
先にも触れたように、ISM製造業景気指数は50%を景気の拡大・後退の分岐点とし、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示しているだけではなく、GDPに先行して景気転換を示唆するところは重要で、1931年以来の伝統的な景気動向指数となっています。アメリカの中央銀行の役割を果たし、金融政策を決定するFRB(Federal Reserve Board of Governors = 米連邦準備理事会)は、本指数が50%を下回っている場合に利上げをしたことがないので、FRBの利上げスタンスを見極める意味でも注目される経済指標の1つであると言えるでしょう。
ISM製造業景気指数と関係の高い各連邦準備銀行製造業景気指数
ISM製造業景気指数は、アメリカの製造業の景況感を表す経済指標ですが、この他にもフィラデルフィア連銀製造業景気指数、ニューヨーク連銀製造業景気指数などが注目される製造業を中心とした経済指標として知られています。それぞれの景気指数は比較的相関関係が高いと考えられていますが、その重要性は明確に区別されていて、
- ISM製造業景気指数
- フィラデルフィア連銀製造業景気指数
- ニューヨーク連銀製造業景気指数
の順に重要度が高いと見られています。
フィラデルフィア連銀製造業景気指数とニューヨーク連銀製造業景気指数、そしてISM製造業景気指数では基準が異なり、前者は0を景況判断の分岐点として、指数がプラスになれば景気が改善、逆にマイナスの場合は悪化していると判断しますが、ISM製造業景気指数は50%を景気の拡大・後退の分岐点としていることに注意が必要です。
また、これらの3つの経済指標の中では、ニューヨーク連銀製造業景気指数が2001年7月から統計をはじめ、2002年4月から発表をはじめた歴史の浅い経済指標であるため、比較・検討の対象とするときには注意が必要となります。
一般に一連の米国の製造業関連指標については、15日のニューヨーク連銀製造業景気指数で大まかな方向性を予測して、第3木曜日のフィラデルフィア連銀製造業景況指数でコンセンサスを形成した上で、翌月第1営業日のISM製造業景気指数で実際の数値を確認するという流れになっています。
おわりに
雇用統計などと並ぶ重要な経済指標の1つであるISM製造業景気指数ですが、その認知度は雇用統計などと比べるとあまり高いとは言えません。
このような比較的マイナーな経済指標を使いこなせるようになると、取引の成績の改善に大きな効果が期待できるかもしれません。