
市場で取引される財は実に様々なものがありますが、単体での金額の大きさと波及効果から金融市場から特に注目を集めるのが、住宅と自動車の販売です。今回はこの2つのうち、新築住宅の販売数を見るときに欠かせない経済指標である「米国新築住宅販売件数」の内容について見てみましょう。
この記事の概要
米国新築住宅販売件数とはなにか
新築住宅販売件数は、アメリカ国内で販売された新築住宅の件数(売買契約が結ばれた件数)のことを言います。これは、景気(住宅)関連の経済指標の一つで、毎月、米国商務省が全米および4つの地域別(北東部、中西部、南部、西部)の新築住宅の販売件数や販売価格などを発表し、また一戸建てに加えて、コンドミニアムと共同住宅を含めた数字も発表されます。
ただし、この件数については、土地付きの新築住宅販売が対象で、既に保有する土地へ住宅を新築したものは含まれません。
米国新築住宅販売件数は何を表しているのか
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数と同様に、景気動向に対して先行性が高い経済指標として知られています。
ただし中古住宅販売件数が所有権移転完了ベースの統計であるのに対して、新築住宅販売件数は契約書への署名ベースの統計であることから、タイミングの違いを原因として新築住宅販売件数の方がより景気に対する先行性が高いと言われています。住宅購入は家計の中でも最も大きく、長期間の支出が必要となる財の購入であるため、住宅購入は家計の所得状況や住宅ローン金利動向に特に影響を受けやすく、金利上昇時には駆け込み需要が増加することも多く見受けられます。そのため購入するかどうかの判断はその時々の景気動向に判断される割合が他の剤に比べると比較的大きく、新築・中古を問わず住宅販売件数は景気動向に最も敏感な経済指標の1つとして注目されています。
住宅販売件数の増減はどのような影響を及ぼしたのか
移民やヒスパニックに代表されるアメリカの低所得者層へのサブプライムローンの浸透とともに住宅販売は急激にバブルの様相を呈し、米国の住宅取引が最高潮に達した2005年の夏には、年率換算で700万件程度の販売件数が記録されました。
しかし住宅価格の下落をきっかけとして低所得者層の住宅ローンの借り換えと返済が滞ると同時にサブプライム危機が発生したことにより新築・中古を問わず住宅の販売件数は急減。1年半も立たない2009年初頭にはほぼ半減した450万件程度まで落ち込みます。活発な住宅取引を背景とした信用飽和による史上空前の好況と、その後の信用収縮をきっかけとする経済恐慌は、2007年からはじまる世界金融危機の切っ掛けとなりました。
新築住宅販売件数はどのように扱うべきか
新築・中古を問わず、住宅を購入することは家計の中でも最も大きな出費であるだけではなく、長期間に渡って支出を強いられる買いものでもあります。そのため、一般の家庭が居住することを主な目的として住宅を購入するときには、そのときの収入や経済環境、金利をはじめとする様々な条件と擦りあわせを行いますが、一般的に好況期には住宅売買が盛んになり、不況期には大きく落ち込みます。
そのため住宅売買の経済指標は、景気動向を見るために欠かせない経済指標として市場関係者から注目されているのです。
おわりに
新築・中古を問わず住宅売買は一般家庭の中でも最も大きな支出の1つであり、その販売動向を見ることは、景気全体を見ることにもつながります。
そのため、新築住宅販売件数は景気の先行きを示す経済指標の1つとして注目されているのです。