
この記事の概要
「地区連銀経済報告(ベージュブック)」とはなにか
通称「ベージュブック(Beige Book)」とも呼ばれる「地区連銀経済報告」(Summary of Commentary on Current Economic Conditions by Federal Reserve District)は、アメリカ合衆国の12地区の連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)がまとめた、各連邦準備銀行が担当する各地区の経済状況を報告する文書のことをいいます。
ベージュブックは、年8回開催されるFOMC(Federal Open Market Committee = 連邦公開市場委員会)の2週間前の水曜日にFRB(連邦準備理事会)により公表される文書であり、報告書がベージュ色のため長ったらしい正式名称ではなく、簡潔に「ベージュブック」と呼ばれます。
「ベージュブック」の元となる報告をおこなう「連邦準備銀行」
ベージュブックの元となる各地区の経済状況をFRBにあげる12の連邦準備銀行とは、アトランタ、ボストン、シカゴ、ミネアポリス、ニューヨーク、フィラデルフィア、セントルイス、クリーブランド、ダラス、カンザスシティー、リッチモンド、サンフランシスコの各地区の中央銀行としての担当する連邦準備銀行のことを言います。
12の連邦準備銀行は、加盟銀行の監督や規制、加盟銀行の法定準備金の保有、連邦準備券(ドル紙幣)の発行など各国の中央銀行業務のうち、「発券銀行」「銀行の銀行」としての業務をおこないます。
これに対して国の中央銀行として重要なもう1つの業務である、国債の購入などによる国への資金提供は、FRBが開催するFOMCの決定に基づいて主にニューヨーク連邦準備銀行がおこなわれます。
大雑把にまとめると、国の中央銀行としての役割を担当するのが連邦準備制度理事会(FRB)であり、金融システムの中央銀行としての役割を担当するのが連邦準備銀行(FRB)と言えるでしょう。
どちらも同じ略称を採用しているために混乱しやすいですが、基本的に重要な経済指標はFOMCか連邦準備制度理事会から発表されて、FOMCの決定にしたがって歩調を合わせた金融政策をおこなうため、いくつかの地区の連邦準備銀行が発表する製造業景気指数を除いて、それほど厳密に区別する必要はないと考えられます。
「ベージュブック」はどのように扱われるのか
一般にベージュブックはFOMCの討議資料とされて、前回のFOMC以降の全米の経済情勢について総合判断をおこないます。
また、ベージュブックでは消費支出、製造、金融サービス、非金融サービス、不動産、雇用などの各項目の状況についても地区ごとの内容が調査・集計されているので、フェデラルファンドレート(FF金利)の操作をはじめとする今後の金融政策を変更するかどうかの重要な判断材料にもなります。
「ベージュブック」の内容は外国為替市場にどのような影響を与えるか
ベージュブックの内容は調査時点での各地区の経済状況、ひいてはアメリカの経済状況を示しているため、時として株式や債券価格などの相場に影響を与えることがあります。
ベージュブックの発表前後には、その内容と内容を受けた取引市場の動向に注意するとよいでしょう。
外国為替への影響については、ベージュブックの発表直後に外国為替市場が大きく変動することはあまりありません。
しかしベージュブックの内容を受けて株式市場や債権市場が大きく変動すると、それらの値動きに遅れて為替変動が起こることがあります。
おわりに
このように、アメリカの経済状況についてもっともまとまった資料であるベージュブックは、株式や債権、為替に至るまで様々な影響を及ぼすため、注目したい報告書の1つです。
FOMCの声明と合わせて、注意を払うとよいかもしれません。