
米国卸売在庫とはどのような経済指標か
米国卸売在庫とは、米国企業在庫と極めてよく似た経済指標として知られ、米国の製造業、卸売業、小売業の各業種について、耐久財と非耐久財に分けて在庫水準(在庫循環の状況)を集計・発表した経済指標のことを言います。
商務省センサス局によって毎月中旬頃に、2ヶ月前の季節調整済みと未調整の両方の数値が発表されています。
米国企業在庫は小売業・卸売業・製造業の3業種の在庫・企業売上高・在庫比率について集計・発表している経済指標ですが、米国卸売在庫は企業売上高と在庫比率のかわりに、在庫水準について集計・発表されている点が異なります。
米国卸売在庫はどのように読み解くのか
企業が抱える在庫が増える要因はいくつかありますが、基本的に在庫の増減は企業の売上高の増減、ひいては世界規模での景気動向とペアになっていることで知られています。
基本的に企業が抱える在庫の増加は市場の需要縮小による供給過剰を意味していて、景気全体が後退していることを示していると考えられます。しかし同時に、景気回復期にも需要の増加に備えて安定供給のために在庫が増えることでも知られています。
このように単純に企業の抱える在庫の推移を追いかけるだけでは在庫の増減しか分からず、その原因は企業の内外のどちらにあるのか、はたまた好況なのか不況なのかの判断はできません。
このような特徴があるため、製造業の動向を取りあつかう他の経済指標と同様に、米国卸売在庫はアメリカ経済の景気動向を予測するための経済指標として扱われていますが、他の製造業の経済指標と照らしあわせた総合的な解釈が欠かせない経済指標として知られています。
「意図せざる在庫増加」と「積極的な在庫積み増し」
米国卸売在庫の推移を追いかければ在庫循環状況は把握できますが、そのときに注意したいポイントとして、表面的な在庫の変動を追いかけることにばかり集中して、「意図せざる在庫増加」と「積極的な在庫積み増し」を取り違えないようにすることがあげられます。
細かく見ると米国卸売在庫は、製造業、卸売業、小売業の3業種の耐久財と非耐久財に分けて集計・発表されています。
米国卸売在庫単体では企業の抱える在庫の増減しか把握できないため、在庫の増減が景気低迷によって生じた「意図せざる在庫増」なのか、景気回復にあわせておこなっている「積極的な在庫積み増し」のどちらであるかの見極めはできません。
そのため、米国卸売在庫単体で判断することはせず、製造業の製品製造や出荷、設備投資をはじめとする製造業に関する様々な景気動向を表す経済指標と合わせてみる必要があります。
米国卸売在庫は、対売上高在庫比率として議論されることが多いことで知られている経済指標ですが、米国卸売在庫単独好況期か不況期かを判断する景気の局面判断は判断することは、非常に難しいと言えるでしょう。
米国卸売在庫のまとめ
【長所】
【短所】
- 単独では「意図せざる増加」なのか「積極的な積み増し」なのか分からない
- 2ヶ月前の数値が発表されるので速報性に劣る
おわりに
単体では材料として扱いにくい米国卸売在庫ですが、他の景気動向の先行指標となる経済指標と合わせて分析すれば、アメリカ経済の動向を予測するために役立つ経済指標の1つと言えます。